願い
「その傷はどうしてついたのですか」
ライドウが雷堂の傷を指でなぞり乍ら問う。
「貴様には関係なかろう」
「そうですね。だって、僕はこのような醜い傷は御免ですから」
「そうか。貴様ではなくて良かったな」
「貴方は、未熟ですね」
ふふっとライドウが笑う。
「貴方は未熟で…弱い。無様ですね。僕とは、違う」
「…貴様の顔にも同じ傷をつけてやろうか」
「僕に?…御冗談を。貴方ごときが」
「貴様に傷をつけてやりたい」
「僕が貴方にその傷を残せた訳ではないのに」
寄せていた身体を一歩引いて距離を取る。
近くてはいけない。自分はきっと、刀を抜いてしまうから。
「僕が、貴方に傷をつけてやりたい」
「下らぬ戯れ言を。貴様ごときが」
消えない様に。消せない様に。
いっそ殺してしまえたらいいのに。
「貴様は未熟で、弱い。無様で…我と同じだな」
「そうですね。きっと、同じなのでしょう」
消したくて傷付けたくて愛おしくて殺したい。
いつか貴方が死ぬ為に。
いつか僕が死ぬ為に。
いつか貴方を殺す為に。
いつか僕を殺す為に。